易筋経と洗髄経は梁の武帝のころインドから来た高僧達磨が作ったといわれている。しかし実際には多くの学者が認めているところでは、1624年に紫懝道人が、医学、仏教、道教の養生の伝統にもとづき、導引術と漢代の東方の洗髄、伐毛の検診法を基礎にし、宋代
の八段筋や健身理論の基礎の上に編集したものである。成立してからは少林寺に流伝し、少林寺の僧たちが寺の至宝と見なすようになった。清代に入ると少林寺は易筋経という最高の武術の秘訣を持っていると、武術界の各派は争って習おうとした。乾隆帝が自ら少林寺に行ってこれにふれ、国家が印刷して出版流伝した。
「いわゆる洗髄は、その内を清くし、易筋は外を固めようとする」洗髄は内を養い、易筋は外を壮んにす。動いては外を動かして易筋強骨、静は内は静かにして心を収め、静中に動を求め、動中に静を求める。
易筋洗髄経功法要訣
➀伸
いつでも筋肉の伸展を最大にするが、かといって緊張しない。
②緩
動作はゆっくり。これが緊張せずに伸展する鍵である。
➂柔
柔によって筋を養う。柔によって経絡を通し、気血をのびのびと全身に送る。
④止
伸展や回転の極で数秒間停止する。十分な伸展とリラックスができ、それによって次第に筋肉の弾力性がついてくる。
⑤安
練功時には安静を求める。
⑥洗
全体を通して全身を洗うようにする。天がこまかな雨を降らせるように、また頭の上から温水が流れてくるように想像する。
⑦息
自然呼吸で始めるが、一定の功夫がついてきたら、細々と吐き綿々と吸う。最後には呼吸を忘れる。
⑧照
自分の中を見ること。内視。
⑨圓
易筋洗髄経を積み上げていくと生命の智慧の輝きが増して、練功も生活も円満になる。
第一勢 韋駄献杵一勢 供手平挙
【動作姿勢】
一 臂前平挙
五本の指がかすかに震えだし、それから前にゆっくり持ち上げていく。肩の高さに挙げ、掌は向き合い、肩関節は伸展し、指先までリラックスして、前に無限に伸びていくようにイメージし、そのまましばらく止まる。かすかな動きは動くに似て動かない、動かないようで動くので、あまり大きな外動を作らない。手指を大きく動かすと内部の気血の動きを妨げてしまう。
二 供手環抱
両手を立てて掌を向こうに向ける。それから肘をわずかに落として引きかけるときに、小指から親指を一本ずつ解き放つようにわずかな自発的な動きを引き出していき、次第に合掌して肘を落とし、胸前に合掌していく。胸との距離は自分の掌ひとつ分、両手が引っ張り合っているのに、互いに排斥する力もある。指先が上に向き、手首と壇中が向き合っている。
合掌には三つの方法がある。
実心掌。両手の指をしっかりつけるのが実心掌である。これは気力を増すのによい。
虚心掌。掌の労宮のところを少し離して行くのが虚心掌である。
虚合掌。指も掌もわずかに離れて間に気をはさんでいるのが虚合掌である。
後の二つはリラックスと気をめぐらせるのによい。両肩は開いてわずかに沈んでいる。これを「肩は沈み肘が落ちて気は丹田に集まる」という。背中はのびのびとひろがっており、「含胸抜背」である。息を吐く時に「気が丹田沈む」ことを助けていく。舌先は上あごに当て、橋をかける。練功して相当の時間が経つと、気が下に向かい、下腹の丹田に沈み、上虚下実となり、胸は緩んでひろがり、腹は充実し、動の中に静があり、静の中に動があり、動くようで動かない、静かなようで静かでない。
【作用】
老人は頭が重く足が軽くなる。上実下虚の状態になりやすい。このかたちでゆったりと呼吸していると、迅速にあせりの気持ちや緊張が消え、自然に気が丹田に沈み、上虚下実の健康な状態になる。続けていくと心が平和になり、百脈が通っていく。
とくにこの練習をしていくと陰蹻脈が通りやすくなる。「掌を合せて指を立てると陰陽蹻脈が通る」と張紫陽が『八脈経』に書いているとおりである。
第二勢 韋駄献杵二勢 両臂横担
【動作姿勢】
一 按掌行気
のどの前で掌を下に向け、下に軽く押さえるようにする。十本の指は向かい合い、気はゆっくりと下腹に降り、腰をゆるめ、尻をひっこめ、胸を張らず、腹に蓄える。
二 両臂横担
両手を前に伸ばしていき、そのまま左右に広げる。いっぱいに広げた時に中指を軸にして掌を上に向けてのばす。両手は肩よりもわずかに高く、肩関節はリラックスし胸も自然にする。両目は平視して遠くを見、若い鷹が遠くを見るようにする。
それから中指を軸にもういちど掌を返し、徐々に立てて、腕の下側の筋肉を伸ばすようにする。両手の労宮穴と両足の涌泉穴に明瞭な気感が出てくる。
両手を下向きに平らにし、前にまっすぐ戻して、胸前に引き、腹前に降ろす。
【作用】
胸をリラックスし、腰や背中が曲がっているのを治し、目の疲れをとり、百の脈を動かす。手を伸ばして無限に伸びていくようにイメージし、宇宙の中に溶けていくように思う。
日常の良くない情緒や心理障害は自然に消えていく。
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